楽しく美味しい鹿児島暮らし

「正座をしなさい」。父の言葉の真意を知る。

僕は、良質なインプットが欲しい時、鹿児島市にある鹿児島ユナイテッドカフェに行きます。店を切り盛りしてるのは、店長の田仲さん。関西育ちで、めちゃくちゃ本を読んでて、社会経験も豊富。僕と年代は一緒だけど、とにかく、興味のアンテナにかすったものは、とりあえず、やっちゃう。まぁ、そんな、とこが、僕にはビンゴなのです。

▪なぜ、カタールはアジアの頂点を取ったのか?

先日は、サッカーアジア杯でカタールが初優勝した翌日、行きました。

「なぜ、カタールは優勝できたのか?」。この日の問いは、これ。答えは、いつもながら、明確に帰ってきます。育成世代から、スペインサッカーを徹底的に叩き込み、その世代を中心に、一貫してトップチームまで鍛え上げてきた。トップチームが結果を出せば、その下の世代は、彼らの成功体験を真似ていけばいい。「これね、昔、W杯出場を逃したドイツもやった手法なんすよ」。1つの質問に、ちょいちょい、似たような事例も挟み込んで教えてくれる。ここが、田仲さんの真骨頂なんですよね。

▪努力するって、どういうこと?

「そういえば、昨日、息子に説教したんすよ」。カウンター奥の厨房から戻ってきた田仲さんが、話を変える。変えるというより、転調。曲(テーマ)はそのままに、話のアプローチが変わる。「ユナイテッドの前監督の三浦泰年さんって、『努力は必ず報われる』って言ってたじゃないですか。でね、僕の息子は受験生なんだけど、どうも、本気度が見えない。だから、朝から、向き合ったんですよ」

ちなみに、田仲さんは、前日のうちに、息子さんへ「明日の朝、ちょっと話したいことがある」とラインで通告してたらしい。当然、息子さんは、何を言われるか、ドキドキする。そして、緊張のうちに、翌朝を迎える。

「努力するって、どういう意味か分かる?」

田仲さんが切り出す。息子は答える。

「頑張る、ってことでしょ?」

ここから田仲メソッドが炸裂する。ただし、「熱情」でも「革命」でもなく、「カンパネラ」のように、静かに口火を切る。

「正座をしなさい」

息子は、反応しない。「まぁ、いいでしょう。その意味は後で説明するから」

田仲さんは、諭すように、息子へ持論を伝える。

「努力ってね、3つの要素が重なってるんだ。1つが熱意。こうなりたい、あれを達成したいという強い思いを持ち続ける熱意がなきゃ、そもそも努力しようがないよね。そして、もう1つが計画性。200ページの参考書があれば、1日10ページずつやって、20日で終える。今日は調子がいいから50ページやって、明日は休もうって無計画性じゃ続かない。サッカー選手が、今日は6時間練習して、明日は何もしないじゃダメでしょ? ちゃんと計画性を持って、毎日、継続していく。熱意を持って、計画的にやる。分かるか?」

▪「正座をしなさい」の真意は?

ここまで話すと、息子は、もはや、グウの音も出ない。すかさず、田仲さんは、3つ目を問う。「最初に、正座をしなさいって言ったのに、君は拒否したよね? 3つ目は、素直でいること。これがないと、君が成長することはできないんだよ」

人は、誰しも、へこんだり、むくれたり、はたまた、有頂天になったり、天狗になったりする。周りにいる人が、どんなに親身になってアドバイスしてくれようが、注意をしてくれようが、この「素直さ」を失ってしまえば、成長が止まる。熱意と、計画性を持っていても、素直さがなければ、いつか、努力は、独りよがりになる。

僕も、小さい頃、年に一度くらい、父に「正座をしなさい」と言われた。これ、ともすれば、正座という「苦行」を子どもに課し、反省させるというふうに取られるかもしれないけど、実は、「素直でいるかどうか」を図る手段としてのバロメーターだったんだなぁ。田仲さんの話を聞きながら、「ああ、父が伝えたかったのは、素直さを失った自分に気づいて欲しかったんだ」と思った。

熱意と、計画性と、素直さ。

努力を構成する3つの要素。

「努力は必ず報われる」。三浦泰年さんの言葉に秘められた思いを、改めて噛み締めた。

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